大判例

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名古屋高等裁判所金沢支部 昭和31年(う)293号 判決

弁護人の控訴趣意は同弁護人提出の控訴趣意書記載のとおりであるから、これを引用する。

第一点(事実誤認)について。

原判決挙示の証拠を綜合すれば優に原判示事実を認定し得る。弁護人は被告人が昭和二十七年四月中(同年四月二十八日以前)に鉱業権者薮谷薫との間に原判決摘示の鉱区につき租鉱権設定契約を締結し、右鉱区につき有効に租鉱権を取得したものであると主張する。成程原判決挙示の証拠によれば被告人が鉱業権者薮谷薫との間に租鉱権設定契約を締結したことはこれを認めることができるけれども此のような契約の締結によつては右当時者間に租鉱権設定の債権関係を生ずるに止まる。即ち鉱業法によれば租鉱権設定契約が成立した後、同法第七十七条の規定に従い契約当事者は連名で所定の手続により租鉱権設定の認可申請をなしてその認可を得、更に同法第八十四条の規定に従い之を登録しなければならない。而して同法第八十五条の規定は(同条所定の例外の場合を除き)登録を以て租鉱権の設定、変更等権利変動の効力発生要件としている。これは民法第百七十六条に対する特別規定である。被告人と薮谷薫との間に租鉱権設定契約の締結されたことは前記説示のとおりであるけれども、所論の租鉱権につき認可及び登録がなされた形跡は本件記録上毫も之を認めることができないのであるから、被告人は租鉱権者であると認めることはできないのである。此のことは所論の如く被告人と薮谷薫との租鉱権設定契約の成立が昭和二十七年四月二十八日以前であつたとしても被告人につき租鉱権の登録がないこと右説示のとおりである以上、被告人は租鉱権者とはなり得ないのである。従つて被告人が租鉱権者であるとの所論は之を排斥せざるを得ない。

(裁判長裁判官 山田義盛 裁判官 沢田哲夫 裁判官 辻三雄)

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